東京地方裁判所 平成7年(ワ)60号 判決 1995年12月26日
原告
星野こと
被告
片庭真一
主文
一 被告は、原告に対し、金一一九七万六一七一円及びこれに対する平成四年六月九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを五分し、その二を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告は、原告に対し、三五四六万六七〇二円及びこれに対する平成四年六月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用の被告の負担及び仮執行宣言
第二事案の概要
一 本件は、足踏み式自転車に乗つて道路を横断中、交通事故に遭つて死亡した男性の内妻が、加害車両の運転者に対し、損害賠償を請求した事案である。
二 争いのない事実
1 本件交通事故の発生
小林武男(以下「武男」という。当時六一歳)は、次の交通事故(以下、「本件事故」という。)に遭い、平成六年六月一〇日多発性骨折兼多臓器障害等により死亡した。
事故の日時 平成四年六月九日午後一一時二〇分ころ
事故の場所 東京都練馬区三原台二丁目二〇番先交差点(別紙現場見取図参照。以下、同交差点を「本件交差点」といい、同図面を「別紙図面」という。)
加害者 被告(加害車両を運転)
加害車両 普通乗用自動車(練馬五七ろ四五四八)
被害者 武男(足踏み式自転車を運転)
事故の態様 武男が前記道路を土支田交差点方面に向かい進行中、横断歩道付近で右折を開始したところ、本件道路を反対方向から直進してきた加害車両と衝突した。事故の詳細については、当事者間に争いがある。
2 責任原因
被告は、加害車両の所有者であり、これを自己のために運行の用に供していたものであるから、自賠法三条に基づき、また、前方不注視の過失により本件事故を引き起こしたものであるから、民法七〇九条に基づき、武男及び原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。
3 損害の一部填補
原告は、自賠責保険から二六六四万六七〇〇円の填補を受けた。
三 本件の争点
1 原告の地位等
(一) 原告の主張
原告は、本件事故当時、武男の内縁の妻であつた。
武男の法定相続人は、訴外小林奈津ゑ、小林松太郎、丸谷一枝であり、同人らは、自賠責保険から各一〇〇万円の支払を受け、原告に対し、被告に対するその余の損害賠償請求権を譲渡した。
(二) 被告の認否
いずれも知らない。
2 原告の損害額
(一) 原告の主張
(1) 葬儀費用 一二〇万〇〇〇〇円
(2) 逸失利益 三一九〇万三四〇二円
ア 稼働収入 二四四二万三三二七円
武男は、本件事故当時、自宅で飲食店を営むかたわら、映画の美術(小道具)の仕事をして収入を得ていたものであり、その収入を合わせて平均賃金を下回ることはないから、平成五年賃金第一巻第一表・産業計・企業規模計・男子労働者・六〇歳ないし六四歳の年収額四三九万一五〇〇円を基礎とし、六一歳男子の平均余命は一九・三一年であるから、就労可能期間はその二分の一の一〇年となり、原告らは、二人とも六〇歳を越えているから、生活費控除率を三〇パーセントとして新ホフマン方式により算定。
イ 年金収入 七四八万〇〇七五円
武男は、六五歳になる平成七年から年額一一一万八七〇〇円の年金を受給することになつていたから、平均余命の一九・三一年につき、生活費控除を三〇パーセントとして新ホフマン方式により算定。
(3) 慰謝料 二六〇〇万〇〇〇〇円
(4) 弁護士費用 三〇〇万〇〇〇〇円
(二) 被告の主張
損害額、特に逸失利益については、争う。
(1) 稼働収入について
武男の本件事故前年度の申告所得は一一五万一一二九円であつたから、稼働収入についての逸失利益の算定に当たつては、右金額を基礎とすべきであり、安易に賃金センサスに依拠すべきではない。また、映画美術の仕事は常時雇用ではなく、アルバイト的なものであり、確定申告もなされていないものであるから、信憑性がなく、これを逸失利益の基礎とすることはできない。
就労可能期間についても、武男の死亡時の年齢から一般の就労可能期間の六七年まではまだ六年あるから、それを超えて武男の就労可能期間を平均余命の二分の一までとするのは理由がない。
生活費控除率についても、武男と原告との間に子どもはなく、武男の扶養家族は原告一人であるから、四〇パーセントとすべきである。
(2) 年金収入について
武男の六五歳から六七歳までの期間は、稼働所得と年金収入が重なるから、その間の生活費控除は四〇パーセントとするのが相当である。
内縁配偶者に対する賠償は、被害者の逸失利益のうち、内縁配偶者の扶養に当てられる分を支払うものであるから、扶養関係が存続する期間だけを認めれば足りるというべきところ、武男の六七歳以後の収入は、年金だけであり、これは全額生活費に当てられるものと考えられるから、結局、年金収入についての得べかりし利益はないというべきである。
3 過失相殺(本件事故の態様)
(一) 被告の主張
自転車は、交差点で右折する際、右折大回りの方法によらなければならないところ、武男は、本件事故当時、酒酔い状態のうえ、深夜見えにくい服装をしながら、無灯火で、かつ、右折大回りの方法によらず、しかも、加害車両の存在に気づきながら、その直前を突然斜めに横断しようとして加害車両の進行を遮る走行をしたため、本件事故が生じたものである。
これに対し、加害車両の速度は、時速七〇キロメートルであり、また、本件事故当時、被告の運転に飲酒の影響はなかつた。
武男の損害額を算定するに当たつては、少なくとも武男の右過失を四〇パーセント斟酌すべきである。
(二) 原告の主張
被告は、現場周辺の道路状況を熟知しながら、本件道路を時速八〇キロメートルで走行していたものであり、被告は事故現場の七三メートル手前で武男を発見したのであるから、武男の自転車が無灯火であつたとしても発見困難ということはなく、被告が制限速度を遵守していれば本件事故は生じなかつたものであるから、武男の飲酒は、本件事故に起因していないというべきである。また、武男は、横断歩道において右折を開始したものであり、事故現場は横断歩道上であるから、武男に特段の落度はない。
仮に、武男に過失があるとしても、一〇パーセント程度にすぎないというべきである。
第三争点に対する判断
一 原告の地位等について
証拠(甲一の1ないし3、四の1、五の1、2、六ないし八、九の1ないし16、一〇、一七、乙八)によれば、原告は、昭和三七年ころから武男と内縁関係にあり、原告の肩書の住所地で生計を共にしていたこと、武男の法定相続人は、母小林奈津ゑ、姉丸谷一枝、弟小林松太郎の三人であり、同人らは、平成六年六月三〇日損害賠償請求権を原告に譲渡したこと、以上の事実が認められる。
すると、原告は、内縁の妻として固有の損害賠償請求権を有するとともに、武男の法定相続人の承継人として、武男が加害者に対して有する損害賠償請求権を行使することができることになる。
二 損害額について
(一) 葬儀費用 認められない。
葬儀費用についても、積極損害である以上、これを支出した事実については、立証を要すべきところ、原告が武男の葬儀費用を現実に負担し、またはこれを支出したことを認めるに足りる証拠はない。
(二) 逸失利益 二三〇二万八五八九円
(1) 稼働収入 一八二五万五〇六五円
証拠(甲五の1、2、六、七、一七、乙八、一七)によれば、武男は、昭和五年八月二二日生まれの健康な六一歳の男性であり、昭和五二年ころから本件事故当時まで原告とともに「ともえ」の屋号で食堂を営み、武男の右食堂の事故前年度の平成三年分の確定申告額は一一五万一一二九円であつたこと、原告はこれと併行して、かつて演劇活動をしていた関係からテレビ映画の美術(小道具)の仕事に携わり、友人の石塚正司が代表取締役をする有限会社石塚との間で、契約形態により平成三年四月一〇日から平成四年三月一〇日までの一年間に合計三四二万円の収入を得ていたが、武男は、美術の仕事の合間に店を経営するのが実情であつたこと、以上の事実が認められる。
被告は、武男の美術の仕事は契約形態であり、実際はアルバイト的なものであつて安定収入はなく、それについての確定申告もないから、直ちにこれを収入の基礎とすることはできないと主張するが、右認定のとおり、武男の仕事は、武男の意識としても、また、収入面にしても、むしろ美術の方が主であつたものと認められるから、被告のこの点の主張は採用できない。
そして、武男の右二つの仕事による収入を合わせると、賃金センサス平成四年第一巻第一表・産業計・企業規模計・男子労働者・学歴計・六〇歳ないし六四歳の年収額四二六万八八〇〇円を下回らないと認められるので、右金額を基礎とし、また、武男の右職種、業務内容に鑑みると、武男は、六七歳を超え、さらに就労を継続する蓋然性が高いと推認できるから、平均余命の二分の一まで就労可能と認め、平成四年簡易生命表による六一歳男子の平均余命は一九・三一年であるから、その二分の一の九年につき、生活費控除を四〇パーセント(武男は、原告との二人暮らしであるから、六一歳であつても、その生活費控除率については、右割合とするのが相当である。)として、ライプニツツ方式により算定すると、武男の稼働収入による逸失利益は、次のとおり、一八二五万五〇六五円となる。
4,268,800円×(1-0.6)×7.1078=18,205,065円
(2) 年金収入 四七七万三五二四円
弁論の全趣旨によれば、武男は六五歳になる四年後の平成七年から年額一一一万八七〇〇円の年金を受給することになつていたことが認められ、六一歳男子の平均余命は、右のとおり、一九・三一年であるが、年金生活者については、年金額が低廉であることに鑑みると、その生活費控除率は一般の場合より高いものと考えられるから、これを五〇パーセントとして年金収入についてライプニツツ方式により算定すると、次のとおり、四七七万三五二四円となる。
1,118,000×(1-0.5)×(12.0853-3.5459)=4,773,524円
(三) 慰謝料 二四〇〇万〇〇〇〇円
原告は、本件事故により長年連れ添つた夫を突然失い、その悲嘆の深さは想像に難くないこと、また、突然命を奪われた武男の無念さ、武男の年齢、その他本件に顕れた諸般の事情を斟酌すると、本件事故による武男の死亡慰謝料は、二四〇〇万円と認めるのが相当である。
(四) 右合計額 四七〇二万八五八九円
三 本件事故態様について
1 証拠(甲一四の1ないし20、一五の1ないし6、一六、乙一ないし一六、一八、一九、被告本人)に前記争いのない事実を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 本件事故現場付近の状況は、別紙図面のとおりである。
本件交差点は、土支田交差点方面から比丘尼交差点方面に向かう幅員七・〇メートルのほぼ直線の道路(都道土支田通り。以下「本件道路」という。)と、本件道路の比丘尼交差点方面から土支田二丁目方面に向かう幅員三・三メートル(片側に〇・九メートルの路側帯がある。)の道路とが交差する、信号機による交通整理の行われていない交差点であり、本件道路を土支田交差点方面から比丘尼交差点方面に向かうとゆるやかな右カーブとなつている。
本件道路の左右には、各一・三〇メートルの路側帯が設けられているが、センターラインは設置されていない。
本件道路には幅員四・〇メートルの横断歩道が設置されており、その手前には停止線が設置されている。
本件道路は、最高速度が毎時三〇キロメートルに規制されており、アスフアルト舗装され、平坦であり、本件事故当時、路面は乾燥していた。
本件道路の見通し状況については、土支田交差点方面、比丘尼交差点方面のいずれからも視界を妨げる障害物はなく、比丘尼交差点方面に向かつて、前方約八〇メートル先の障害物が視認できる状況にある。
本件事故現場付近の路面には、比丘尼交差点方面に向かい、直線のタイヤスリツプ痕が二条印象されており、その長さは、右二三・七〇メートル、左一五・九〇メートルであつた。また、散乱物件として、ガラス片、ウインカーのレンズ片、野球帽、シヨルダーバツグ、長靴、ナンバープレートカバー等が落ちていたほか、血液が流出していた。
(二) 被告は、本件道路を何度も通行したことがあり、道路の状況や交通規制についてはよく知つており、本件事故現場に横断歩道が存在し、土支田二丁目方面に向かう道路が存在することも知つていた。
被告は、本件事故当日、仕事が終わつた後、勤務先の同僚や客らとともに午後七時二〇分ころから約一時間位の間、居酒屋で食事をしながら、ビール中ジヨツキを一杯飲んだ。その後、被告は、一人で加害車両を運転して交際中の女性の家に行き、午後一一時一〇分ころまで過ごしたが、その間、飲酒はしなかつた。
被告は、勤務先の寮に戻るため、加害車両を運転し、ライトをやや下向きにして、本件道路を時速約七〇キロメートルで進行中、別紙図面の<1>地点において、同図面のア地点に無灯火の自転車に乗つた武男が対向して走行しているのを発見し、ややぎこちない走り方をしているのに気づいたが、自転車はそのまま直進するものと思い、同速度で進行したところ、同図面の<2>地点において、武男が本件道路を右斜めに横断してくるのが見えたため、直ちに急制動したが間に合わず、横断歩道上の同図面の<3>地点の、同図面の×地点(自転車は、同図面のウ地点)において、加害車両左前部と自転車の左側面とが衝突し、加害車両のフロントガラスが割れるとともに、武男と自転車が加害車両に乗り上げる形となつて走行し、加害車両は同図面の<4>地点に停止した。
武男は同図面のエ地点に転倒し、自転車は同図面のオ地点に倒れていた。
その後、被告は、加害車両を同図面の<5>地点に移動させたが、加害車両は左前部バンパー、フエンダー、ボンネツト、左ドア、屋根等が凹損したほか、フロントガラスとリアガラスが破損していた。
本件事故当時、本件道路には、被告進行方向、対向方向とも加害車両以外に自動車は通行していなかつた。
被告は、本人尋問において、本件事故の際、いつもと変わらない感じで、飲酒の影響はなかつたと述べている。被告が本件事故後、飲酒検知を受けた形跡はない。
(三) 武男は、本件事故当日、午後一時過ぎまで自宅で飲食店の仕事をした後、午後二時ころ、東映の撮影所に行くと言つて自転車で出掛け、撮影所内で行われた仕事の打上げに参加し、午後一〇時ころ、さらに寿司屋に行つてから自転車で自宅に戻る途中、本件事故に遭つたが、本件事故後に行われた実況見分の際、武男はすでに病院に収容されており、実況見分には立ち会わなかつた。武男の事故当時の服装は、野球帽をかぶり、黒長ぐつを履いていた。
武男の血液からは、一ミリリツトル当たり一・二ミリグラムのアルコールが検出された。
武男の自転車は、シルバー色の軽快車であるが、フレームが右に曲損したほか、前輪フオーク、前輪かご、後部泥除け部分が破損していた。
(四) 訴外鐘ケ江盛人(以下「鐘ケ江」という。)は、武男、被告のいずれとも面識はなかつたが、本件事故当時、仕事を終えて帰宅するため、本件道路を比丘尼方面から土支田方面に向かい歩いていたところ、鐘ケ江を追い抜いて行つた自転車が、本件道路の左側を普通の速度で進行中、そのうち斜めに右に曲がり始めたことから、何となく危ないなと思つて見ていると、反対方向から進行してきた加害車両が急ブレーキを掛ける音と衝突音がして本件事故が発生した。本件事故現場と鐘ケ江との距離は、約四〇ないし五〇メートルであつた。
2 本件事故時の加害車両の速度
被告は、この点について、捜査段階から一貫して時速約七〇キロメートルと述べているうえ、スリツプ痕から制動初速度を算出する次の公式()を用い、加害車両のスリツプ痕の長さを左二三・七〇メートル、摩擦係数μを路面が乾燥した場合の代表値〇・七として計算すると、次のとおり、六五・五五キロメートル毎時となり、これに衝突によるエネルギーの減少を考慮に入れ、さらに本件事故の際の衝突状況をも加味すると、被告の供述内容に格別不自然な点も認められないことになるから、加害車両の衝突時の速度は、概ね時速七〇キロメートル程度であつたものと推認できる。
これに対し、原告は、加害車両の速度は時速八〇キロメートルであつたと主張し、これに沿う証拠(乙五、九)も存在するが、右証拠はいずれも加害車両の速度を時速八〇キロメートルとする根拠が明らかでなく、その内容上、加害車両の速度を重視した性質のものとも認められないから、これに依拠することはできず、この点の原告の主張は採用できない。
3 武男の動静について
武男の血中アルコール濃度は、一ミリリツトル当たり一・二ミリグラムであり、酔いの程度は微酔程度であるが、一般に抑制が取れ、陽気となり、決断も早くなるが、誤りも増える状態にあるとされるところ(乙一八)、被告は、本人尋問において、武男はぎこちないような感じであつたと述べており、これは鐘ケ江供述の「何となく危ないな」という印象とも趣旨において一致するものと認められ、本件事故当時、武男は飲酒の影響の下に、不適切な運転動作により右折横断を開始したものと認められる。
4 右認定事実を総合すると、信号機による交通整理の行われていない交差点内で生じた本件事故において、被告は、夜間で交通閑散なのに気を許し、制限速度を三〇キロメートル以上上回る速度で進行したことから、折から飲酒の結果、注意力が散漫となつていた武男が直進車両の直前を横切るような形で右折横断を開始したため、本件事故が生じたものと認められ、その際、被告が制限速度内で進行していれば、武男を発見後、急制動することにより、安全に停止でき、本件事故は生じなかつたのであるから(被告は、別紙図面の<2>地点において急制動しており、そのとき武男は進路前方三二・五〇メートル前方の同図面のイ地点にいたから、被告の速度を時速三〇キロメートル、摩擦係数を〇・七とし、反応時間を〇・八秒としても、計算上は、約一一・六三メートルで停止できることになる。)、本件事故が被告の速度超過の過失を主たる要因とするものであることは明らかである。
他方、武男としても、飲酒のうえ、不適切な運転動作により右折横断を開始したことが本件事故発生に影響していることは明らかであり(なお、信号機の設置されていない比較的小さな交差点では、自転車がいわゆる右折大回りの方法をとらないことはよくあることであるから、武男がそのような通行方法をとらなかつたことをことさら不利に扱うのは相当でない。)、この点に過失が認められる。
そして、武男、被告の双方の過失を対比すると、原告の損害額の二〇パーセントを減額するのが相当である。
5 右過失相殺後の損害額 三七六二万二八七一円
四 損害の填補
原告が自賠責保険から二六六四万六七〇〇円の填補を受けたことは、当事者間に争いがないから、右填補の武男の損害額は、一〇九七万六一七一円となる。
五 弁護士費用
本件事案の内容、審理経過及び認容額、その他諸般の事情に鑑みると、原告の本件訴訟追行に要した弁護士費用は、一〇〇万円をもつて相当と認める。
第四結語
以上によれば、原告の本件請求は、一一九七万六一七一円及びこれに対する本件事故の日である平成四年六月九日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を認める限度で理由があるが、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 河田泰常)
現場見取図